VEHICLE PHOTOGRAPHY
CLIENT — DAI / CCJ北陸
VEHICLE — FORD MODEL A HOT ROD
PURPOSE — 納車記念・イベント展示記録
PROJECT
かなり、ぶっ飛んだ選択だ。
今回撮影したのは、CCJ北陸に所属するDAIさんの愛車、Ford Model A Hot Rod。
これまでにも、さまざまなアメリカ車を乗り継いできたDAIさん。
次の一台として最後まで迷っていたのが、Buick RivieraとFord Model A Hot Rodだった。
どちらを選んでも普通ではない。
それでも最終的に選んだのは、Model A Hot Rod。
初めてその話を聞いたときは、「そっちへ行ったか。」と思った。
かなり、ぶっ飛んだ選択だ。
けれど、実際にこの車と一緒にいるDAIさんを見ていると、その選択は間違っていなかったのだろう。本人も、とても気に入っている様子だ。
そして何より、そこに一台置いてあるだけで周囲の景色まで変えてしまう。そんな強烈な存在感を持った車である。
THE CAR
自分より年上の「おじいちゃん」。
DAIさんがこれまで乗り継いできたアメリカ車の中でも、このFord Model A Hot Rodは特別だ。
何しろ、オーナー自身よりも年上。
いわば「おじいちゃん」のような一台である。
低く構えたルーフ。剥き出しになったエンジン。ボディの外へ大きく張り出したタイヤ。むき出しのエキゾースト。そして、新品のように磨き上げることとは正反対の、長い時間をまとったボディ。
古さも、錆も、傷も、この車では欠点ではない。むしろ、それらすべてがこの一台の表情になっている。
綺麗に整えるだけでは生まれない格好良さがある。
それが、このModel A Hot Rodの魅力だと思う。
RESTORE & UPDATE
古さを残して、今を走る。
もちろん、古い車をそのまま走らせているわけではない。
レストア作業では、この車が持つHot Rodらしい佇まいや長い年月を重ねてきた雰囲気を大切にしながら、中身の一部には現代的な改修が施された。
目的は、飾って眺めるためではない。
これからも安全に走らせるためだ。
古いものを、ただ古いまま残すのではなく、残すべきものは残し、必要な部分には現代の技術を取り入れる。
見た目に刻まれた時間はそのままに、現代の道路を走れる一台へ。
だから、このModel A Hot Rodは単なる「古いFord」ではない。
過去の姿をまといながら、今を走るHot Rodだ。

THE FIRST DAY
最初の一枚を残しておく。
1枚目を撮影したのは、このFord Model A Hot RodがDAIさんのもとへやって来た納車時の節目だった。
この車との時間が、まさに始まったばかりの頃だ。
だから、この日の撮影には単純に「格好いい車を撮る」こととは別の意味があった。
DAIさんと、この一台の物語が始まった瞬間を残しておく。
車は乗れば変わる。手を加えれば姿も変わり、走れば傷も増えていく。オーナーと愛車との関係も、時間とともに変わっていく。
数年後、このModel A Hot Rodがどんな姿になっているのかは分からない。だからこそ、最初の姿を写真に残しておく意味がある。
これは完成した車を記録するためだけの写真ではない。
DAIさんとModel A Hot Rodのスタート地点を残した一枚だ。
PHOTOGRAPHER’S DECISION
Hot Rodは、止めて撮るだけでは足りない。
この車を見たとき、最初に撮りたいと思ったのが走っている姿だった。
Model A Hot Rodは、止まっているだけでも十分すぎるほど格好いい。けれど、それだけではこの車の持つ荒々しさや、機械としての存在感までは伝わりきらない。
何より、この車は飾っておくためではなく、現代の道路を安全に走るために手を入れたHot Rodだ。ならば、その姿を写真にしたい。
そこで1枚目では、車と並走しながらシャッター速度を落とし、流し撮りで撮影した。
背景と路面が横方向へ流れ、ホイールは回転する。その中で、低く構えたModel A Hot Rodのシルエットだけが画面に残る。
表現したかったのは、単なるスピード感ではない。
「このHot Rodが、今も路上を走っている。」
その事実だった。
自分より年上のFordを、現代の日本で走らせる。そこまで含めて、この一台の格好良さだと思う。

ANOTHER SCENE
納車の日から、展示される一台へ。
もう一枚は、富山県射水市の新湊大橋を背景に撮影した。
この場所で開催されたイベントに、DAIさんのModel A Hot Rodも展示された。
納車時に撮影した最初の一枚とは、写真に残そうとしたものが少し違う。
こちらでは車そのものだけではなく、その車が存在した場所と時間まで一枚に残すことを意識した。
巨大な新湊大橋。港。船。そして、その手前に佇む一台のHot Rod。
長い歴史を背負ったアメリカ車と、現代の巨大な橋梁構造物。年代もスケールもまったく違うものが、一つの画面の中に同居する。
だからこそ、車だけを大きく切り取らず、空と新湊大橋を大胆に取り入れた。
どこで、どんな一台として展示されていたのか。
その日の記憶まで残すための構図だ。
TWO PHOTOGRAPHS
同じ車でも、残すべきものは違う。
この2枚に写っているのは、同じFord Model A Hot Rodだ。けれど、それぞれの写真で残したかったものは違う。
一枚目は、走るHot Rodと、DAIさんとの物語の始まり。
二枚目は、イベントという場所に存在したHot Rodと、その日の記憶。
納車。カスタム。イベント。ツーリング。そして、何年も乗り続けた先の姿。
車とオーナーの間には、その時にしか残せない瞬間がある。
車両撮影で残したいのは、車の形だけではない。その一台を選んだ理由や、手を入れた時間、走った場所、そしてオーナーと愛車との関係。
車と人が過ごした時間まで、一枚の写真に残す。
それが、私が車を撮る理由のひとつだ。
BUILD THE CAR.
CAPTURE THE SOUL.