加賀友禅をまとった大使たちが迎える、金沢・松濤庵の「秋の加賀友禅茶会」。着物の色と文様、お茶を運ぶ所作、手の中の器。加賀友禅の美しさが、人と人の交流の中に息づく茶会でした。

木村雨山による桔梗絵の茶碗、菓子「初紅葉」、そして作家の着物をまとう姿。準備から茶席、庭での記念撮影まで、写真でたどります。
加賀友禅大使の着姿と、二代由水十久先生
茶会の準備段階から力を添えたのが、当時、加賀友禅技術保存会会長を務めていた二代由水十久先生です。写真の大使は、この日、お世話になった由水先生の加賀友禅を着て茶会に臨みました。

作り手と、その着物をまとう人が同じ茶会に集う。作品としての美しさに加え、着物を通じた人のつながりが伝わる一枚です。




松濤庵で整える、秋の茶席
会場の松濤庵(しょうとうあん/美術館公式表記:松涛庵)は、金沢21世紀美術館の敷地内にある、加賀藩ゆかりの茶室です。木の柱や障子、その向こうの庭の緑が、着物の色彩を引き立てます。
本席の床を彩る、掛け軸と秋の花
本席の床には、宮崎友禅斎「無漏無主寳国行人友禅斎図」。木村雨山の花入に、マユミ、タニギク、フジバカマが生けられました。掛け軸と花、花入にも、加賀友禅と秋を感じる取り合わせが見られます。
花の枝を整えているのは、奈良宗久氏。茶道教場・好古庵の公式サイトでは、金沢を拠点に国内外で茶道の指導・普及に取り組む活動が紹介されています。





お点前と、一碗を届けるおもてなし
釜から立ち上る湯気、柄杓を扱う手元、客席へ茶碗を差し出す姿。着物は立ち姿だけでなく、動きの中でも表情を変えます。茶会の写真には、その一つひとつの所作が残っています。



木村雨山による桔梗絵の茶碗
この茶会で正客に用意されたのは、人間国宝・木村雨山による桔梗絵の茶碗でした。木村雨山は、加賀友禅を代表する染色家の一人です。
淡い黄土色の器に、青紫の花が描かれています。写真に残るのは、その茶碗を両手に取る場面。器の丸みに沿って広がる花の絵が、手元に見えます。
正客を務めたのは、当時の金沢市長・山野之義氏。次客には、当時の金沢市議会議長・久保洋子氏が席につきました。

作品を眺めるだけでなく、茶をいただく器として手に取る。その場面は、作家の表現と茶の湯が人の所作を通して結びつく、この茶会の魅力を伝えています。




掲示資料に見る、加賀友禅技術保存会会員の器
会場には、「加賀友禅技術保存会会員作品」と題した資料が掲示されていました。器の写真に作家名が添えられ、それぞれの絵柄を見比べられる資料です。
由水十久、中町博志、柿本市郎、杉村典重、由水煌人、上田外茂治、高平良隆の名が並びます。柿本市郎の「露草」、杉村典重の「松葉」、上田外茂治の「コスモス」、高平良隆の「山野草」など、植物を題材とした作品名も見られます。

器の白地を広く残した絵柄もあれば、線や色が器の表面を大きく横切るものもあります。人物や茶席の写真に加えて、こうした資料にも目を向けると、作家ごとの表現を味わう手がかりが増えていきます。

菓子「初紅葉」に込められた、染めと始まりの意味
茶席の菓子の銘は「初紅葉(はつもみじ)」。会場の説明文には「吉はし製」と記されています。
説明文では、初紅葉を、秋になって初めて色づいた紅葉のことと紹介しています。さらに、紅葉の語源を染め物の「揉み出ず」と結びつける説明が添えられていました。
その説明に続くのが、銘に込めた思いです。染め物である加賀友禅と、加賀友禅大使にとって初めての茶会にちなみ、「初紅葉」と名付けたと記されています。


秋の色づきと、初めて迎える茶会。その二つを一つの銘に重ねたところに、この茶席ならではの心配りが感じられます。名前の由来を知ることで、菓子もまた、加賀友禅と茶の湯をつなぐ一つの表現として見えてきます。
吉はし菓子店
東山にある創業昭和22年の老舗の和菓子店。
上生菓子や生菓子を予約制で作られている菓子店で、金沢ではお茶会や料亭さんで登場し今まで数々の名茶会に吉はしさんのお菓子が並び見て楽しみ食して楽しめる知る人ぞ知る名菓子。
金沢に来たら一度は味わってみてほしい
茶を囲み、言葉を交わすひととき
茶碗を手にする人、会話を交わす人、畳の間で過ごす人。茶席の緊張感だけでなく、合間の柔らかな表情も、この日の大切な記録です。






松濤庵の庭と茶室で、記念の一枚
集合写真では着物の色と文様を見比べ、庭での写真では一人ひとりの表情を楽しむ。加賀友禅大使と参加者の姿を、茶室と庭の風景とともに残しました。






着物・器・菓子を通して味わう、金沢の文化
二代由水十久先生の加賀友禅をまとう姿、木村雨山の桔梗絵を手に取る場面、そして菓子「初紅葉」に込められた思い。松濤庵の茶会では、着物・器・菓子が、一服の茶を囲んで結びついていました。
作り手の表現を、着て、手に取り、人と分かち合う。秋の加賀友禅茶会の写真から伝わるのは、暮らしの中で工芸を楽しむ豊かさです。