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アバルト124スパイダーを彩る「レコードモンツァ」の魅力

Record Monzaとは?

アバルト124スパイダー レコードモンツァ

FRスポーツの復活とアバルト124スパイダー

フィアットグループにとって久しぶりのFR(後輪駆動)スポーツモデルとして登場したアバルト124スパイダーは、日本では2016年8月に自動車イベント「オートモビル カウンシル」で発表された。マツダ・ロードスターをベースにしながらも、アバルトらしい刺激的な走りとサウンドを与えられたこのモデルには、純正オプションとして特別なエキゾーストシステムが用意されている。それが「レコードモンツァ(Record Monza)」だ。

Record Monza Systems -2種類に分かれる-

 ①機械式
 ➁電子制御式

この2種類に分かれる。この説明を以下に。

排気の切り替えの仕組み ―― 排気圧で開く①「機械式」バルブ

レコードモンツァのサウンドを大きく変化させているのが、排気経路を切り替えるバルブの存在だ。ここで押さえておきたいのは、124スパイダーに採用されているレコードモンツァのバルブが、電子制御ではなく排気圧そのものによって開閉する機械式(排圧作動式)のバルブだという点である。

バルブはスプリングによって閉じ側に付勢されており、エンジン回転数が低いうちは排気圧がスプリングの張力に打ち勝てないため閉じたままとなる。しかしアクセルを踏み込んでいき、排気圧がスプリングの力を上回るとバルブが押し開かれ、排気の流れる経路が切り替わる仕組みだ。具体的には、低回転時は両外側のパイプから排気される一方、回転を上げていくと排圧によってバルブが開き、両内側のパイプからも排気が行われることで、より迫力のあるサウンドになるとされている。

アバルト124スパイダーのレコードモンツァは①機械式(アナログ弁)

アバルト124スパイダー Recoud Monza レコードモンツァ

124スパイダーのタコメーターはレッドゾーンが6500rpmからで、3000rpmを過ぎたあたりでレコードモンツァのストレートパイプの経路が開く(弁が開く)と紹介されており、スロットル操作によって生まれる排気圧の変化がそのままバルブの開閉、ひいてはサウンドの変化に直結する、いわば「アナログ」な機構であることが124スパイダー用レコードモンツァの特徴といえる。
レコードモンツァには蠍のマークがエンボス加工してある

①機械式(排圧作動式)と➁電子制御式の違い

実はレコードモンツァには、124スパイダーに採用されている機械式(排圧作動式)のほかに、後年のアバルト595/695コンペティツィオーネなどに搭載された電子制御式が存在する。両者は同じ「レコードモンツァ」という名前を持ちながら、バルブを開閉する原理がまったく異なる。

  • 機械式(排圧作動式・124スパイダー等):バルブはスプリングのみで制御される。排気圧がスプリングの張力を上回ると自動的に開き、下回ると閉じる、いわば「機械仕掛け」の単純な構造。運転者が任意にオン・オフを切り替えることはできず、あくまで回転数と踏み込み量に応じて自然にサウンドが変化する。
  • 電子制御式(595/695コンペティツィオーネ等):バルブの開閉を電磁弁が担い、スイッチ操作(いわゆる「スコーピオンモード」など)と連動して電気的に切り替えられる。速度域や走行モードに応じてプログラム的にバルブを開閉させることができ、ドライバーが任意に音量・音質をコントロールできるのが特徴だ。

124スパイダーのオーナーの間では、バルブを閉じ側に戻すスプリングを柔らかいものに交換して開きやすくしたり、固着を防ぐために定期的に潤滑オイルを差したりといったメンテナンスが話題になることが多く、こうした「手のかかる機械式ならではの個体差や付き合い方」も、電子制御式にはない124スパイダー版レコードモンツァ特有の楽しみ方になっているようだ。

ストックマフラー(純正マフラー/MOPAR)とレコードモンツァの違い

124スパイダーには標準装備の「ストックマフラー(純正ノーマルマフラー)」と、オプション設定の「レコードモンツァ」の2種類のエキゾーストが存在する。両者の主な違いは次のとおりだ。

アバルト124スパイダー 純正マフラー
abarth 124spider stock mufler mopar
項目ストックマフラー(標準)レコードモンツァ(オプション)
排気経路シンプルな1系統のレイアウト触媒からサイレンサー、サイレンサーからマフラーエンドまでの取り回しが異なる複雑な2系統レイアウト
バルブ機構なし排気圧作動式バルブ(機械式)を装備
サウンドの傾向力強いが比較的落ち着いたトーン低回転は穏やか、高回転域でパイプが増えて迫力のあるサウンドに変化
外観マフラーエンドの形状はレコードモンツァと似ている後方から見た形状はストックと近いが、下回りの取り回しは別物
重量レコードモンツァと比べて重い傾向オーナーのレビューでは「純正(ストック)より軽い」との声もある

なお、後方から見ると標準マフラーとレコードモンツァはマフラーエンドの形状が似ているが、下回りを覗き込むとその違いは一目瞭然で、標準マフラーが排気管の取り回しがシンプルなのに対し、レコードモンツァは触媒からサイレンサーまでの取り回しと、サイレンサーからマフラーエンドまでの取り回しが異なり、管長の違う複雑なレイアウトになっている。この複雑な取り回しこそが、官能的と評されるエキゾーストサウンドの秘密になっているようだ。

正確な公表重量やdB値などの詳細スペックはメーカーから体系的に公開されているわけではなく、現時点で確認できる情報は限定的だ。

アバルト124スパイダー MOPAR 純正マフラー

アバルト124スパイダー純正マフラーには”MOPAR”の刻印があります。MOPAR部品供給部門

中古パーツ市場ではレコードモンツァ単体が取引されている例も見られ、新車オプションとしてだけでなく、後年になってから中古の124スパイダーへ移植するオーナーも少なくないようだ。
中古と新品では実際のところ価格はそれほど変わらない。20万ほどで販売されている
筆者は過去に3万キロ代-9万円で市場に出したことがあるので購入者はかなりお買い得だったのではないだろうか?

サウンドの違い

実際に標準マフラーとレコードモンツァを比較した試乗レポートによれば、124スパイダーは標準マフラーでも力強いサウンドを聴かせてくれるが、レコードモンツァを装着した車両はエンジンを吹かした際の音質や、アクセルを戻して回転が下がっていく際に音の余韻が残る点に特徴があるという。

またあるインプレッションでは、フルスロットル時にはイタリアン・スーパーカーを思わせる咆哮を響かせ、アクセルを戻した瞬間にはアフターファイアーのような破裂音が混じるとも紹介されている。その音の傾向はアルファ・ロメオ4Cのエキゾーストノートに通じるものがあると評されており、高性能エンジンならではの魅力を感じさせる部分は共通しているようだ。

迫力あるサウンドと車検対応という事実

レコードモンツァの排気音は非常に迫力があり、初めて耳にすると「これで本当に車検に通るのか」と驚くオーナーも少なくない。実際、オーナーレビューの中にも純正オプションとは思えないほどの音量に驚く声が見られるほどだ。

しかし、レコードモンツァはあくまでアバルトが正規に開発・販売する純正オプションパーツであり、アバルトのカルチャーマガジンでも、レコードモンツァは車検対応であると明記されている。社外の非公認マフラーとは異なり、メーカー自身が車検適合を前提に設計・認証しているからこそ、あの迫力あるサウンドを合法的に楽しむことができる、という点は意外と見落とされがちなポイントだろう。

筆者所感:レコードモンツァを装着して初めて感じた「アバルト感」

ここからは個人的な見解になるが、124スパイダーに乗っていて、レコードモンツァを装着して初めて「これぞアバルトだ」という感覚を得られた気がしている。ノーマルマフラーの124スパイダーも十分に走りは楽しいが、サウンドという面ではどこか大人しく、良くも悪くも上品にまとまっている印象があった。そこにレコードモンツァを組み合わせることで、回転を上げた瞬間に牙をむくようなエキゾーストノートが加わり、車としてのキャラクターが一段階はっきりするように感じられる。マツダ・ロードスターという優れたベースに、アバルトらしい「刺激」を最後に注ぎ込んでいるのがこのマフラーなのだと思う。

レコードモンツァはうるさいか?

レコードモンツァを検討する際、多くの人が気になるのが「実際どれくらいうるさいのか」という点だろう。結論から言うと、レコードモンツァがうるさいと感じられるのは主にエンジン始動直後、いわゆるコールドスタート時だといえる。

エンジンが冷えている始動直後は、アイドリング回転数がやや高めに制御されることもあり、排気音が大きく響きやすい。しかしエンジンが温まってくると、通常のアイドリング状態ではそれほど気になるほどの音量ではなくなっていく。(エンジン温度をアバルトが定めた規定温度まで早い段階で上げようとするアルゴリズム、プログラム制御によるものが働いているものである。この規定温度に上がるまでの区間はATであればアクセル開度が通常回らない5000rpmまで回り空ぶかし制御機能がリミッター解除されている盲点がある。通常は空ぶかし抑制機能が働き3000rpm未満となる。)

その後は、基本的にアクセル開度、つまり踏み込み量に比例して排気音が解放されていく仕組みなので、静かに流すような走り方であれば静粛性はさほど損なわれない。逆にアクセルを踏み込んで回転を上げれば、迫力のあるサウンドが顔を出す。つまりエンジンが温まって安定した状態であれば、どの程度「うるさく」感じるかは、その時々のアクセルの踏み方、すなわちオーナー自身の運転次第・アクセル開度という部分が大きい。

早朝や深夜、住宅街での始動時にはコールドスタート特有の音量に注意が必要だが、走り出してエンジンが暖まってしまえば、あとは自分の踏み込み量でサウンドをコントロールできる、というのがレコードモンツァの実際の付き合い方といえるだろう。

名前の由来 ―― アバルトの歴史とのつながり

「モンツァ」の名は、1960〜70年代にチューニングファンの間で憧れの存在だった「マルミッタ・アバルト(アバルトマフラー)」の系譜を受け継ぐ現代版スペシャルエキゾーストという文脈で語られることが多い。輸入元の表記は「レコードモンツァ」だが、往年のアバルトファンの間では「レコルドモンツァ」という呼び方に親しみを持つ人も少なくないようだ。イタリアの名門サーキット、モンツァの名を冠していることからも、アバルトのモータースポーツの歴史を意識したネーミングであることがうかがえる。

トリビア:「純正パーツなのにオプション」という一見矛盾した位置づけ

レコードモンツァについて調べていくと、「メーカー純正パーツでありながら、標準装備ではなく有償オプション」という扱いに、一見矛盾したような印象を持つ人もいるかもしれない。実際、装着車のオーナーレビューにも「こんな音でオプション設定なのか」と驚く声が見られるほど、そのサウンドは標準マフラーとは一線を画している。

「純正=最初から車に組み込まれているもの」というイメージと、「オプション=あとから選んで追加するもの」というイメージが、感覚的にぶつかるためだろう。しかしこれは自動車業界では珍しいことではなく、むしろ一般的な仕組みだ。「純正」という言葉が意味するのは、あくまで「そのパーツが自動車メーカー(またはブランド)自身によって設計・開発され、性能や耐久性、車両との適合性についてメーカー保証のもとに供給されているかどうか」であり、「標準装備かどうか」とは別の軸の話になる。レコードモンツァも、アバルトが124スパイダー専用に開発し、正規のオプションカタログに載せて販売している以上、社外品のアフターパーツとは違う「純正オプション(メーカーオプション)」という扱いになる。

このような「純正だが選択制」というオプション設定が採られる背景には、主に次のような理由が考えられる。

  • コスト配分の問題:標準装備にすると全車両にコストが上乗せされるため、性能面での嗜好が分かれるパーツ(特にサウンドやチューニングに関わるもの)は、欲しい人だけが選べる有償オプションにする方が合理的である
  • 法規・仕様差への対応:排気音量や排出ガス規制は国や地域によって異なるため、全車標準化するより仕向け地ごとにオプション扱いとする方が柔軟に対応しやすい
  • ブランド戦略上の演出:アバルトはもともと「フィアット車にチューニングを施して特別な一台に仕立てる」ことを生業としてきたブランドであり、レコードモンツァのように「自分の車をさらに刺激的な一台へと仕立てるための特別なパーツ」を用意すること自体が、アバルトらしい商品構成であるとも言える

つまり「純正パーツなのにオプション」という状態は矛盾ではなく、「メーカーが責任を持って開発・供給する特別装備を、必要な人だけが選べるようにしている」という、ごく合理的な位置づけなのだ。むしろこの構図は、マルミッタ・アバルトを後付けのチューニングパーツとして販売していた創業当時のビジネスモデルの延長線上にあるとも捉えられ、レコードモンツァがアバルトというブランドの成り立ちそのものを体現したパーツであることを裏付けているとも言えるだろう。

アバルトとフィアット ―― ブランドの成り立ちと関係性

レコードモンツァというパーツの位置づけを理解するうえで欠かせないのが、アバルトというブランドそのものの成り立ちと、フィアットとの関係性だ。

アバルトの創業者カルロ・アバルトは、オーストリア・ウィーンで生まれレーシングライダーとして活躍した人物であり、その後イタリアへと移住する。1949年にトリノでアバルトを設立した当初は、主にフィアット車をベースにした改造車や部品の製造・販売を手がけるチューナーだった。

アバルトとフィアットの関係は創業当初から深く、アバルトは独自のコンプリートカーも手がけていたが、その記念すべき第1号車「204A」にはフィアット製のエンジンが搭載されており、チューニング事業のベース車としても多くのフィアット車が選ばれていた。フィアットのコンパクトで実用的な車体に、モータースポーツにも通用する本格的な走りを与えるというスタイルが、アバルトの持ち味として広く支持されるようになっていった。

1950年代にはチューニングキットの売上が大きく伸び、輸出額が年間総売上の1割を占めるまでに成長したが、その一方で資金繰りの問題を抱えるようになり、最終的にフィアットとの合併という道を選ぶことになる。1971年にはアバルトはフィアットに買収され、以後はフィアット社内のモータースポーツ部門としてWRC向けマシンの開発などを担うようになった。1981年には会社としての「アバルト&C.」の名称は姿を消すが、フィアット内のレーシングブランドとしての活動は続き、そして2007年にフィアットによってアバルトブランドの復活が正式にアナウンスされ、フィアット車をベースとした市販モデルに再びアバルトの名が冠されるようになった。

つまりアバルトは、独立した自動車メーカーというよりも「フィアット車をベースに、走りとサウンドを先鋭化させるハイパフォーマンス・ブランド」として生まれ、現在もその成り立ちを色濃く受け継いでいる存在だ。124スパイダーもまた、マツダ・ロードスターの技術基盤にフィアットグループの開発が加わり、そこにアバルトならではの専用チューニングが施された一台であり、レコードモンツァはその象徴的なパーツといえる。

まとめ

アバルト124スパイダーの「レコードモンツァ」は、単なる社外マフラーのような音量アップパーツではなく、排気圧という物理現象そのものを利用してサウンドキャラクターを変化させる、アバルトらしい機械仕掛けの「官能的な走りの演出装置」だ。電子制御に頼らずスプリングと排気圧だけでバルブを開閉させるそのアナログな仕組みは、1960〜70年代から続くアバルトのチューニング文化と、フィアット車をベースに特別な一台へと仕立て上げてきたブランドの成り立ちを、現代に伝えるものでもある。124スパイダーの購入や中古車選びを検討している人にとって、レコードモンツァの有無や状態は、試乗時にぜひ確認しておきたいポイントの一つだろう。

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